夫の風俗(ソープ・デリヘル)通いは不貞行為?離婚理由になる?

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風俗通いは離婚理由になるの?

夫がソープランドやデリヘルなどの性風俗店を利用していたら嫌ですよね。

当サイトの既婚女性100人への調査では、95%が夫のソープの利用を「許せない」と回答しています。
ヘルス・デリヘル・ホテヘルの場合は92%でした。

妻の妊娠中や里帰り出産中などに利用する夫もいます。
というのも、性的なサービスは浮気や不倫に当たらないと考えている男性が多いからです。

発覚のきっかけとしては「お店の会員証やソープ嬢の名刺」「クラミジアなどの性病」「風俗嬢とのメール」などがあります。

夫の風俗通いが不貞行為になるのか、離婚理由として認められるのかどうか見ていきましょう。

離婚の理由になる不貞行為とは何か?

裁判上の離婚原因は、民法770条で定められています。
その中の1号が「配偶者に不貞な行為があったとき。」です。

浮気や不倫などではなく「不貞な行為」と表現されています。

不貞行為の定義

ではその不貞な行為とは、具体的にはどんな行為なのでしょうか。

夫婦には貞操義務があり、お互いに性的純潔を保たなくてはなりません。
この貞操義務に違反することが「不貞」ですが、最高裁判所の判例の中で次のように説明されています。

「配偶者に不貞の行為があつたとき。」とは、配偶者ある者が、自由な意思にもとづいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをいう

昭和48年11月15日 最高裁判例

ずばり肉体関係、性交渉、セックスがここで言う「性的関係」のことです。

なので、風俗であっても性交渉を行えば不貞行為となります。
風俗店での性交渉を不貞行為と認めた判例(平成22年2月25日東京地裁)もあります。

風俗店にもいろいろな種類がありますが、実はそのほとんどで性交渉は禁止、本番行為はNGとされています。

挿入を伴わない性交類似行為を「性的関係」、つまりは不貞行為に含むかどうかは微妙で、弁護士によっても考えが別れます。

性行類似行為とは

文字通り性交に類似した行為のことで、児童ポルノ規制法(児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律)に登場する言葉です。

判例によれば、次のとおりです。

「異性間の性交とその態様を同じくする状況下における,あるいは性交を模して行われる手淫・口淫行為,同性愛行為など,実質的にみて性交と同視し得る態様における性的な行為をいうもの」

簡単に言うと、結果として射精を伴う可能性の高いものと考えれば良いでしょう。

よって、ディープキスや胸を触るなどの「わいせつな行為」止まりの行いは性行類似行為とはならず、不貞行為にもなりません。

夫が風俗で遊んだこと、淋病(性感染症)に感染したことなどの証拠があっても、不貞行為とは認定しなかった判例(平成17年7月27日東京地裁)もあります。

本番の行為が認められなければ不貞行為とは言えないという判例ですね。
ただしこの夫婦の場合は、結果的に夫の暴力による慰謝料と離婚は認められています。

夫側のよくある言い訳

ソープやデリヘルの利用がバレた夫がよく言うのが、次のような台詞です。

  • ただ性的欲求を解消していただけで浮気じゃ無い
  • 素人と浮気するよりプロの方がおまえも安心だろう
  • 会社の付き合いで仕方なく行っただけだ
  • お前が相手してくれないから外で処理してきただけだ

気持ちが無かろうが、付き合いだろうが、性交渉は不貞行為です。
性交類似行為も不貞行為となる可能性があります。

唯一それらしい言い訳は最後だけでしょう。
確かにセックスレスは離婚理由としても認められるものです。
一方が正当な理由も無く数ヶ月も性交渉を拒めば、十分な離婚理由となります。

だからといって不貞行為を行って良いというわけではありません。
不貞行為に対して慰謝料を請求した場合に、いくらか減額となる可能性はありますが、それにはセックスレスの期間やその原因があなたにあることの証拠が必要です。

性風俗の種類

風俗の種類

いろいろな種類のお店があります

性的サービスが行われるお店には、いろいろな種類があります。
不貞行為となるものは○、性交類似行為となるものは△、どちらにも当てはまらないものは×として紹介します。

○ ソープランド

浴室で女性が性的サービスを行います。
本人同士による単純売春に罰則が無いことを逆手に取ったお店です。

つまりは普通に本番行為が行われます。
男性客は自分の自由意志で性行為を行うので、不貞行為となります。
ただし客を取っているだけのソープ嬢へ慰謝料を請求することはできません。

△ ヘルス・デリヘル・ホテヘル

手淫、口淫、素股などが行われますが、挿入を伴う本番行為は禁止されています。
性交類似行為となります。

△ ピンサロ

主に口でサービスを受けるお店です。
口淫、つまりオーラルセックスも性交類似行為となります。

△ 性感マッサージ・性感エステ

マッサージを受けるお店ですが、手淫による射精が行われます。
手淫も性交類似行為です。

× おっパブ・セクキャバ

おっぱいパブ、セクシーキャバクラです。
キャバクラのように女性の接客でお酒が飲めるのですが、女性の体を触ることができます。
服の上から胸に触れる程度のお店から、サービスタイムには上半身裸の女性を触り放題のお店まであります。

キスはあっても、男性がズボンを下ろすことはありません。
ちなみに北海道のすすきのでは、キャバクラと言えばセクキャバのことです。

× キャバクラ

谷間が見えるなどセクシーな衣装を身にまとってはいますが、性的なサービスは行われません。
隣に座って接客を受けるだけです。
いわゆる枕営業が行われた場合は不貞行為となります。

ちなみに一般的なガールズバーは制服に露出はありません。
風俗営業許可も取っていない普通の飲食店なので、女の子が隣に座ることはありません。

(参考:離婚したい!夫のキャバクラ通いは浮気?

まとめるとこうなります

  • ソープランドは性交渉が行われるので完全に不貞行為
  • デリヘルなどの性交類似行為は不貞行為とは言い切れない
  • セクキャバなど性交類似行為のないお店は不貞行為とはならない

夫の利用したお店のサービスを調べる必要があるでしょう。

ただし、離婚できるかどうかで考えた場合、不貞行為か否かだけでは判断できません。

不貞行為でもすぐに離婚できるわけではない

NO

すぐに「不貞=離婚」とはなりません

ソープなら離婚できて、その他なら離婚できないという単純なものではありません。

裁量棄却

離婚理由を定めた民法770条には2項があり、こう書かれています。

「裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。」

これを裁量棄却といいます。

不貞行為があったとしても裁判所が婚姻を継続するのが相当だと判断すれば離婚できないということです。

例えば、次のようなケースを考えてみましょう。

夫が上司の誘いを断り切れずに一度だけソープランドへ行ってしまった。
本人はとても後悔して反省している。
夫婦には小さい子供がいて、夫も育児に力を注いでいる。
今回のことが無ければとても良い夫である。

こういったケースでは、不貞は行われましたが結婚生活を続けるべきだと判断される可能性が高いでしょう。
不貞の回数や期間が少ない、本人が反省しているなどの状況なら、夫婦関係の修復が可能だと判断される可能性があります。
小さな子供がいるかや、離婚により経済状況が悪化するかなども判断材料となります。

逆に、デリヘルなどの本番行為の無いお店でも「婚姻を継続し難い重大な事由」だと判断されれば離婚することができます。

婚姻を継続し難い重大な事由

民法770条1項5号で定められています。
1号(不貞行為)、2号(悪意の遺棄)、3号(3年以上の生死不明)、4号(強度の精神病)に当てはまらなくても、重大な理由があれば離婚裁判を起こせるというものです。
例えば性格の不一致や、DV、セックスレスなどです。

デリヘルやセクキャバ通いなどでも、それによって夫婦関係が破綻して修復の見込みが無ければ離婚理由として認められるということです。

何度話し合っても風俗遊びを辞めてくれず、お金もつぎ込んでろくに帰ってこない。
そんな状況なら「婚姻を継続し難い重大な事由」として認められるでしょう。

ただし、月にセクキャバに何回行ったら離婚などと明確に決められているものではありません。
それぞれの事例を裁判官が総合的に判断するものなので、よく似た状況でも離婚できることもあればできないこともあるでしょう。

まとめ ~離婚や慰謝料のためには証拠が必要~

風俗遊びが不貞行為となるかは、基本的に性行為の有無で判断される。
ただし性行為があっても、裁判所に婚姻を継続するべきと判断されることもある。
逆に不貞行為そのものでなくても、夫婦関係が破綻していれば離婚が認められることも。

なんだかあいまいな結論となってしまいましたが、不貞行為があった方が離婚が認められやすいのは確かです。
セクキャバよりもデリヘル、デリヘルよりもソープの方が夫の罪が重いと考えれば良いでしょう。

離婚が認められるかどうかはいろいろな状況を総合的に判断して決められます。
夫側が裁判になるのを避けたいなどの理由があれば、妻側は強気に出るという作戦もあるでしょう。

裁判の前に行われる調停では、基本的に夫婦関係を修復できないか検討されます。
どうしても離婚したり慰謝料をもらったりしたいなら、不貞行為や婚姻関係が修復できない状態である証拠を集めておくことが重要です。

風俗通いの証明責任は原告であるあなたにあります。
慰謝料を免れたい夫は、「すでに妻との婚姻関係は破綻していた」「セックスも拒否され、ほとんど会話もなかった」「家事もそれぞれが行っていた」などと言ってくるかも知れません。

夫側があなたの非となる証拠を集めていて、あなたが証拠を持っていなかったら、あなたの方が慰謝料を払う可能性もあるのです。

風俗嬢への慰謝料請求は難しい

普通の不倫であれば、夫だけでなく不倫相手にも慰謝料を請求できますが、風俗では話が違ってきます。
ポイントは「自由意志」です。夫は自分の意志で風俗へ行っていますが、風俗嬢にとっては仕事です。完全な自由意志とは言えません。

また、お客が既婚者かどうかも知るよしもありません。
慰謝料の請求は認められないでしょう。もし認められるなら、簡単に逆美人局ができてしまいます。(美人局:夫婦で行なう恐喝・詐欺)

ただし、恋愛関係へと発展して、プライベートで付き合っていた場合は請求可能です。
この場合は営業上のアフターサービスかどうかが争点となるでしょう。

どこまで許すか伝えておこう

そもそも、夫婦の間で風俗について話し合っていれば問題は起きなかったかもしれません。

男性は、風俗を浮気と考えていない人が多く、妻を裏切っている自覚がないのです。
「もしもエッチなお店に行ったら、離婚するからね。」など、ハッキリと自分の意志を伝えておくとトラブルが減らせるでしょう。

夫婦カウンセラーの資格を所有しています。探偵についての疑問や、浮気調査、夫婦関係などについてわかりやすく情報をまとめるよう心がけています。