匿名や偽名でも探偵・興信所に調査依頼ってできるの?

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匿名で依頼できる?「匿名で調査をしてほしい。」こんな相談が、探偵社・興信所には多く寄せられています。身分を明かしたくない理由は様々でしょう。
例えば妻や夫の浮気。それは、誰にも知られたくない秘密です。芸能人にとってはスキャンダルですし、大手企業では出世にも影響しかねません。

もちろん、依頼するからといって、探偵にあなたの個人情報をすべてさらす必要はありません。ですが最近では、氏名をインターネットで検索すれば、勤務先などの個人情報が出てくる人もいるでしょう。
できれば本名を隠し、匿名や偽名で依頼したいと思うのも、無理はありません。ですが、相手がまっとうな探偵であれば、匿名の調査は受けてもらえません。

調査の内容には、正当性が必要
探偵は、依頼される調査内容に正当性があるか、依頼人が嘘をついていないかを、慎重に判断します。
それもそのはず、調査結果が犯罪に利用されることを何よりも恐れているからです。犯罪の片棒を担いだ探偵事務所となれば、逮捕されなかったとしても、廃業に追い込まれるのは間違いないでしょう。
だから、怪しい依頼人からの調査依頼は、どんなに儲かる話でも断るのです。

依頼人がストーカーだったケース
ストーカー殺人事件実際に、依頼人が探偵から得た調査結果をもとに、殺人を犯した事件があります。
2012年11月に起きた「逗子ストーカー殺人事件」です。

犯人は、元交際相手の女性の所在調査を、千葉県の探偵に依頼しました。
依頼を受けた千葉県の探偵は、東京の調査会社を使って、女性の住所を割り出しました。
この東京の調査会社は、違法な調査方法を使ったため、逮捕されています。
探偵の他にも警察の失態や、様々な不手際や不幸が重なった結果、ストーカー男性に女性の住所が伝わってしまいました。
その結果、ストーカーだった依頼人が、女性を殺害するという最悪の結果になったのです。
調査依頼を受けた千葉県の探偵は廃業。東京の調査会社の代表者は懲役2年6ヶ月、執行猶予5年の判決を受けています。

この事件の影響もあり、探偵は、怪しい依頼者からの調査依頼を受けないように、よりいっそう注意しているのです。

そもそも法律により、匿名では調査できません

2007年に「探偵業の業務の適正化に関する法律」(略して探偵業法)が施行されました。
(参考:探偵業の業務の適正化に関する法律等の概要

探偵業法第7条には、「探偵業者は、依頼者と探偵業務を行う契約を締結しようとするときは、当該依頼者から、当該探偵業務に係る調査の結果を犯罪行為、違法な差別的取扱いその他の違法な行為のために用いない旨を示す書面の交付を受けなければならない。 」とあります。

簡単に言うと、依頼者は「調査結果を犯罪に利用しません」という誓約書に署名をしなくてはならないのです。当然、匿名では誓約できないので、本名が必要になるのです。
探偵・興信所を取り締まる公安委員会は、探偵業者は依頼者の確実な氏名、住所は把握しておかねばならないと指導しています。

依頼者が虚偽の氏名・住所で契約した場合はどうでしょうか。これは、通常よりも犯罪に利用される可能性が高いと判断されるでしょう。
探偵業法第9条には、「探偵業者は、当該探偵業務に係る調査の結果が犯罪行為、違法な差別的取扱いその他の違法な行為のために用いられることを知ったときは、当該探偵業務を行ってはならない。 」とあります。

依頼に虚偽があった場合、調査は中止となり、全額請求となる探偵社もあれば、違約金として見積もりの1.5倍の請求となる探偵社もあります。
また、免許証などの身分証明を求める探偵社も増えているので、虚偽記載をするのはそもそも難しくなってきています。

それでも匿名で受ける業者はあるの?

悪徳業者実は、良く探せばホームページ上に「匿名での依頼もお受けします」と記載している探偵社がいくつかみつかります。
もしも本当に依頼者の本名を把握せずに調査依頼を受けているとしたら、完全な違法業者です。
匿名の場合は、前金制の一括払いとしているところもありました。連絡が付かなくなるのを恐れて、前払いとしているのでしょう。

こういった業者は、そもそも法律を守るつもりがありません。必要以上に高額な費用を請求したり、何度も追加料金を要求したり、着手金だけ受け取って何も調査しないなどといった悪質な行為をしている可能性もあるでしょう。そういった悪徳探偵にひっかからないように注意してください。

偽名と嘘の住所で見積もりをとったほうがいい?
あるサイトには「見積もりをとるときは、偽名や嘘の住所を使いましょう」と書いてありました。何が何でも個人情報を渡したくないというわけです。
最近は、大手の探偵事務所などでは匿名で相談を受け付けるところも増えています。そういったところに匿名で相談するのはもちろん問題ありません。

ですが、名前の入力が必須の探偵社もまだまだあります。そういったところにまで、偽名や虚偽の記載をするのはおすすめしません。
なぜなら、探偵との信頼関係に影響するからです。

探偵は、調査結果が犯罪に使われることを恐れていることは先に述べました。そのため、怪しい依頼人からの調査依頼は受けません。あなたが探偵で、依頼人に身分証を要求したとします。「実は偽名だったんです」なんて契約の前に突然言われたら、どう思いますか?完全に警戒するでしょう。
せっかく良い探偵だと思って契約しようと思っても、警戒されたら依頼を受けてくれないかも知れません。

探偵が断るときは、「あなたは怪しいからお断りします」とは言いません。はっきり断るのではなく、「200万円はかかるでしょうけど、成功率はかなり低いですね」などと言うのです。
急に他より高めの見積額を提示されたことはありませんか?ひょっとしたら、それはあなたへのお断りの手段だったのかもしれません。

探偵には守秘義務があるので安心してください

守秘義務探偵業法の第10条には、秘密の保持について定められています。つまりは、探偵には守秘義務があるので、業務上知り得た秘密を漏らしてはならないのです。

まっとうな探偵であれば、秘密がバラされることはありません。依頼が完了したら、一定期間の後にすべての情報を破棄している探偵事務所もあります。心配なら、問合せの時にその後の個人情報の扱いについて聞いてみてください。

それでも、契約するところ以外には個人情報を教えたくない
先にも述べたように、相談や見積もりの段階なら、匿名でもOKなところが増えています。メールフォームにも「匿名希望」と書けば良いので、わざわざ偽名を入力する必要はありません。電話番号を知られたくなければ、非通知で電話をかけてOKなところもあります。本名などは、契約するときに明かせば大丈夫です。

複数の探偵へ匿名で一括見積もりのできるサイトも便利です。
個人情報が探偵へ渡らないので、後から営業電話が来ることもありません。

夫婦カウンセラーの資格を所有しています。探偵についての疑問や、浮気調査、夫婦関係などについてわかりやすく情報をまとめるよう心がけています。