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当記事は、同居中の夫に浮気された妻側の視点に立って書いています。
夫が「婚姻関係の破綻」を主張してきたときのために、夫婦関係を立証する方法などを紹介しています。
もしもあなたが夫や浮気相手の立場の場合には、ご自身の立場に置き換えてお読みください。
婚姻関係の破綻とは
離婚裁判などで良く出てくる言葉に「婚姻関係の破綻」があります。
これは、分かりやすく言うと「夫婦関係が成立していない」ということです。
破綻に明確な定義はない
「寝室が別なら破綻」「一ヶ月会話が無ければ破綻」などの明確な定義や条件はありません。
あえて言うなら「離婚の意思があり夫婦としての生活を送っておらず、修復の見込みがない」といったところでしょう。
円満とまでは言えなくとも、修復の可能性があれば破綻とは言えないのです。
「破綻の抗弁」浮気の言い訳に使われる
婚姻関係が完全に破綻している状態なら、浮気をしても慰謝料を支払う必要がありません。
夫婦関係は浮気によって壊れたのではなく、すでに壊れていたのだから関係ないというわけです。
そのため、浮気がバレて離婚を突きつけられた夫は次のような言い訳を持ち出します。
「彼女と出会ったときにはすでに夫婦関係が破綻していた。だから俺も彼女も慰謝料を支払う義務はない!」
これを破綻の抗弁と言います。
同居している場合の破綻
お互いが離婚の意思をもって別居している場合は、破綻していたと認められることが多いです。
別居していたかどうかは、きわめて重要な要素なのです。
同じ家に夫婦が同居している場合は、一方が破綻していなかったと主張すれば破綻と認定されることは少ないです。
同居でも破綻と見なされるケースもある
立証責任は、破綻を主張する夫にあります。
夫が次のような証拠を出してきたら、同居中であっても認められる可能性があるでしょう。
離婚の条件などについて話し合っていた
どちらか一方が離婚を主張しているだけでなく、お互いに離婚の意思を明らかにしていた場合は認められるケースが多いです。
離婚条件などについて話し合った書類があると証拠となるでしょう。
夫と離婚について話し合うなら、浮気の証拠をしっかりと手に入れてからにするべきです。
長期間家庭内別居をしている
同じ家に住んでいても、まったくの他人として生活しているような家庭内別居の場合も認められることがあります。
具体的には、顔を合わせても会話が無い、寝室は別でもちろんセックスレス、食事は別々、家事も自分の分だけ、会計もそれぞれというような場合です。
ただし外では普通に振る舞っている仮面夫婦の場合は、夫婦としての実態があったと判断される可能性が高くなります。
冠婚葬祭などに夫婦で出かけることも重要な判断材料となるからです。
夫婦として生活していた証拠を出そう
夫側の「すでに破綻していたんだ」という主張は、立証するのが難しいです。
対して、夫婦として生活していた証拠を出すのは簡単です。
やっていないことを証明するよりも、やったことを証明する方が簡単ですから。
法律においては、「愛しているかどうか」といった心の中の状態は関係ありません。
愛していようがいまいが、夫婦としての形が保たれているかどうかで判断されるのです。
日記
日記に書いてあれば、それがすべて事実として認められるわけではありませんが、証拠のひとつとして採用されます。
訴訟のために書いたものではなく、あくまでも日常の様子を記録したもののほうが信憑性が高くなります。
日記から、一緒に食事したこと、セックスしたこと、誕生日プレゼントをもらったことなど、良好な夫婦関係がうかがえると良いでしょう。
メール
メールやLINEなどからは、夫婦の関係性が浮かび上がります。
そもそも夫婦が成り立っていないなら連絡を取り合っているのもおかしいですよね。
親密な様子が伝わるやりとりが残っていれば、強い証拠となるでしょう。
浮気した夫からの謝罪や、やり直そうといったメールがあれば、修復の可能性ありと判断されるでしょう。
家族での旅行
夫婦や家族で旅行へ行っていたなら、関係が良好な十分な証拠となるでしょう。
チケットや写真などで日時を証明するのも簡単です。
旅行の計画をしていたというのでもOKです。
冠婚葬祭への参加
夫婦が揃って冠婚葬祭へ出ているかも重要な判断基準です。
ただし、子どものために出席せざるを得ないこともあるのであくまでも判断材料のひとつとして考えてください。
愛情のない仮面夫婦でも、夫婦の形を維持しようとしているということは、完全に破綻しているとは言えません。
預金通帳や家計簿
家計が別になっていないことを証明できれば、夫婦が成立している証拠のひとつとなります。
元から夫婦それぞれが収支を管理する完全独立型の家庭もありますが、家計が同じならお互いに協力していると言えるでしょう。
どちらか片方でも、修復へ向けて努力をしていれば破綻しているとは言えません。
夫が離婚したがっていても、あなたがやり直そうと提案しているメールなどがあるといいでしょう。
同居中で破綻と認定された判例は少ない
認定されるかどうかは、夫婦の様々な状況を総合的にみて判断されます。
同居している場合は、修復可能だと認定されることが多いですが、破綻が認められた判例もあります。
夫が浮気する以前に、妻側から夫に離婚を迫っていたケースでは破綻が認められました。
このケースでは、公的な書面に破綻を認めるような記載があったことも影響したと考えられます。
実際に離婚について話し合いを進めていた、妻側も離婚したいことを認めているなどといった場合には、同居していても婚姻関係の破綻と認められる可能性が高くなります。
認定されたくないのなら、破綻と取れるような内容を公的な書面に記載しない、離婚の話し合いを進めないなど注意が必要ですね。
事実と違うことや、納得できない内容の書類にはサインをしてはいけません。
とはいえ、同じ家で暮らしている場合には、心配しすぎる必要はありません。
浮気相手への慰謝料請求は可能?
男性が浮気するとき、独身を偽るケースの他に、妻と上手くいっていないことにするパターンもあります。
「妻とはもう終わっているんだ」「もうすぐ離婚するんだ」という男性の話を鵜呑みにして不倫関係となった女性もいるでしょう。
夫の浮気相手へ慰謝料を請求するときに、どう影響するでしょうか。
夫が不和を偽っていた場合
ほとんどの場合は、しっかりと確認しなかった愛人側に過失があると認定され、慰謝料も支払わせることができるでしょう。
注意していれば、破綻していないことに気づけたはずであれば、過失があるとされます。
あなたの夫がよっぽど巧妙に愛人を騙しているような場合は、愛人も被害者です。
その場合はあなたの夫が「貞操権の侵害」として、愛人に慰謝料を請求される可能性もあります。
夫が相手女性に対して、独身だと偽っていたときも同じです。
本当に独身だと思っていたのか、既婚だと気づかなかったことに過失は無いのかが争点となります。
夫が破綻を勘違いしていた場合
先に述べたとおり、同居ではまず破綻は認められません。
夫が破綻状態だと思い込んでいただけの場合は、浮気相手へも慰謝料請求できます。
本当に破綻していた場合
浮気の開始が婚姻関係の破綻後であれば、浮気相手へ慰謝料を請求することはできません。
破綻時期と浮気の開始時期とを争うことになるでしょう。
相手が未成年の場合
もしも、浮気相手側に過失があり慰謝料を請求できたとしても、成人の場合に比べ少額となるでしょう。
不貞行為はあなたの夫と浮気相手の2人による共同不法行為であり、成人と未成年では成人の方が大きな責任があると判断されるからです。
また相手が未成年の場合は、あなたの夫による「貞操権の侵害」が認められやすくなります。
さらに18歳未満の場合には、あなたの夫が「青少年保護育成条例違反」となり、逮捕される可能性もあります。
まとめ ~ほとんどの場合は単なる言い訳~
夫婦で暮らしていながら破綻していると言うのは、あなたの旦那さんの言い訳です。
浮気をしたいから女性に嘘をつき、慰謝料を払いたくないからあなたを言いくるめようとしている。
調停や裁判になれば、同居中ならまず認められることはありません。
ただし、すでにあなたの方から離婚を切り出していたり、長期間の家庭内別居を証明できるものがある場合は例外もあります。
とはいえ、本当に破綻していないのであれば、日記やメールや写真などで簡単に夫婦関係を証明できるでしょう。
別居している場合については、こちらをご覧ください。→別居後に夫の浮気が発覚した場合の慰謝料は?