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夫の浮気相手が未成年だと、安易に慰謝料を請求するのは考え物です。
特に相手が18歳未満なら話は複雑です。
淫行条例や児童ポルノ禁止法などが関わってきます。
浮気相手への制裁よりも、夫と離婚をするのか再構築を目指すのかを考えた方がいいかもしれません。
未成年者へ慰謝料請求するときの注意点
不貞行為は、あなたの夫と浮気相手の2人による共同不法行為です。
そのため基本的には夫だけでなく、浮気相手へも慰謝料を請求することができます。
ですが、そもそも未成年者は契約をすることができません。
慰謝料などを定めた示談書に本人が署名捺印したとしても、親権者が取り消せるのです。
相手の両親がどのような判断を下すかは、本人の年齢や収入の有無、教育方針などによっても違ってくるでしょう。
いずれにしても、最終的には相手の親権者との話し合いになる可能性が高いです。
ただし、あなたの夫が独身だと嘘をついていた場合や、浮気の前から離婚前提の別居中で夫婦関係が破綻していた場合などは請求が認められません。
中学生以上なら責任を問うことはできる
浮気などの民事事件では、小学校を卒業する12~13歳程度で責任能力があるとされています。
つまりは、中学生以上であれば親ではなく本人の責任だということです。
ですが、支払い能力のない学生に慰謝料を請求しても現実的には払ってもらうのは難しいです。
例え裁判で勝ったとしても、差し押さえられるのは本人名義の財産のみ。
親の給料などを差し押さえることはできません。
支払いの判決が出たとしても、自己破産されてまったく回収できないこともあります。
そもそも未成年者とは
日本では満20歳未満、つまり20回目の誕生日を迎える前日までが未成年者です。
結婚したら成人となる「成年擬制」
「成年擬制」は、一部の都道府県では青少年保護育成条例に関わってきます。
日本の法律では、父母の同意があれば未成年であっても男性は18歳以上、女性は16歳以上で婚姻が可能です。
そして、未成年者が結婚すると成人とみなされます。
第753条
未成年者が婚姻をしたときは、これによって成年に達したものとみなす。
20歳になる前に離婚してもそのまま成年として扱われます。
ただし成年になったからといって、年齢が20歳以上になるわけではありません。
2022年4月からは18歳以上が成年となります
2018年6月13日、成人年齢を20歳から18歳に引き下げる改正民法が参院本会議で賛成多数により可決されました。
施行後は、18歳になれば自分一人で契約することができます。
親の承諾がなくても、慰謝料についてのやりとりを行えるということです。
そして女性の結婚できる年齢は16歳から18歳へと引き上げられます。
未成年で結婚することができなくなるため、上で説明した「成年擬制」も廃止となります。
(参考:成人18歳に、改正民法成立 2022年から施行 – 産経ニュース)
浮気相手の年齢に関連する条例・法律
ひとくちに未成年と言っても年齢に幅がありますよね。
相手の年齢によって、関係する条例や法律が違ってきます。
18歳と13歳とが大きな区切りとなります。
18歳以上なら問題なく慰謝料請求できる
たとえ未成年であっても、18歳以上であれば成人と同じように慰謝料を請求して問題ありません。
ただし成人の場合と比べると、少額になる可能性があります。
大人と未成年が一緒に悪いことをした場合、大人の方が責任が重いのは当然のことでしょう。
ただし、裁判までいかずに示談となる場合は、相手が認めれば高額になることもあります。
相手が働いているなど支払い能力があるなら、親に知られたくなくて自分で支払う可能性もあるでしょう。
相手が学生などで収入がなければ、実際に慰謝料を用意するのは相手の両親(親権者)です。
親権者が言われるまま慰謝料を支払うのか、裁判まで争うのかは分かりません。
たとえ裁判で勝ったとしても、差し押さえられるのは本人名義の財産のみです。
親がお金を出さないのなら、まったく回収できない可能性もあります。
裁判には費用がかかりますし、お金が目的ならあまり納得のいく結果にはならないでしょう。
また、現在が18歳以上でも、夫と最初に不貞行為を行ったのがもっと若いときの可能性があります。
そういった証拠が出てきた場合は、下記で述べるリスクが発生します。
18歳未満の場合は淫行条例と児童ポルノ禁止法
職場でアルバイトしている女子高生など、職業によっては18歳未満の女性と一緒に働いている男性も多いです。
浮気相手が18歳未満でも、中学生以上であれば責任を問うこと自体は可能です。
ただし、実際に満足のいく慰謝料を手に入れることは難しいでしょう。
しかも、不貞行為とは別の問題がでてきます。
いわゆる淫行条例違反
18歳未満との性交は、各都道府県の定める「青少年保護育成条例」(自治体によって名称は違います)の違反となります。
すべての都道府県において、18歳未満との性交を罰する、いわゆる淫行条例があります。
東京都の場合は「東京都青少年の健全な育成に関する条例」の中に「何人も、青少年とみだらな性交又は性交類似行為を行つてはならない。」とあります。東京都の場合は、青少年とは「18歳未満の者」のことです。
違反した場合、2年以下の懲役または100万円以下の罰金です。
保護者の同意があり、結婚前提の真剣交際であれば18歳未満(13歳以上)でも問題とはなりません。
有名なのは、高橋ジョージと三船美佳元夫妻でしょう。
結婚当時、三船美佳さんは16歳でした。
当然ですが不倫の場合は真剣交際とは認定されないでしょう。
親が、18歳未満の自分の娘が不倫をしていたと知ったら、警察へ被害届を出す可能性が高いです。
夫が相手に慰謝料を支払うなど、示談が成立すれば不起訴となることもあります。
もし不貞行為の慰謝料を取れたとしても、淫行の慰謝料の方が高くつくでしょう。
離婚する場合は、元旦那がどうなっても関係ないと見捨てることもできますが、現実的にはそうもいきません。
特にあなたに子どもがいる場合です。
父親が淫行で逮捕されたと、噂になるかもしれません。
逮捕されれば、実名で報道されることもありえます。特に教師などの公務員だと報道される可能性が高いです。
元旦那が仕事を失えば、子どもの養育費を受け取れなくなってしまうかもしれません。
18歳未満を相手に慰謝料を請求すると、手痛いカウンターを喰らう可能性が高いということです。
不貞行為は許しがたいことですが、できるだけ穏便に話を進める必要があるでしょう。
都道府県によっては、条例の青少年の定義に「婚姻により成年に達したものとみなされる者を除く。」などの注釈がつけられていることがあります。
その都道府県においては、成年擬制によって成年となった18歳未満の相手と性行為をしても「青少年保護育成条例違反」となりません。
援助交際なら児童ポルノ禁止法違反
お金を払って性行為を行う援助交際は、ズバリ言ってしまえば売春です。
ただし、18歳以上の相手なら罰せられることはありません。
売春防止法によって売春は禁止されていますが、罰則がないからです。
ただし18歳未満との援助交際の場合は、また別の法律があります。
「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」です。
通称「児童ポルノ禁止法」といって、この中では児童(18歳未満の者)に金品などの対価を渡して性交などの行為を行う「児童買春」を禁止しています。
5年以下の懲役または300万円以下の罰金と、淫行条例違反よりも重い罪になります。
夫が援助交際を行ったときの相手の年齢がはっきりしないなら、下手に慰謝料請求をするとやぶ蛇になりかねません。
逮捕されれば、児童買春容疑として実名報道される可能性もあります。
児童ポルノ禁止法には、成年擬制についての規定はないので、一度結婚していても「児童」とみなされることにも注意です。
性行為を行っていなくても、相手の裸を撮影したり、わいせつな格好をした画像を送らせたりしていた場合は、児童ポルノの製造や所持といった罪に問われます。
13歳未満との性行為は「強制性交等罪(強姦罪)」
日本における性的同意年齢(性行為の同意能力があるとみなされる年齢)は、13歳以上です。
つまり、13歳未満との性交は同意があっても「強制性交等罪(従来の強姦罪)」となります。
18歳未満との淫行条例違反よりも重い罪となります。
旧強姦罪では、最低3年の懲役で執行猶予の付く可能性がありましたが、強制性交等罪となり5年以上の懲役(基本的に実刑)となっています。
しかも告訴が必要な親告罪ではなく、告訴のいらない非親告罪となっています。
たとえ示談で告訴が取り下げられたとしても、起訴され有罪となる可能性があるということです。
相手が13歳以上だと信じ込んでいた場合は、強制性交等罪とはなりませんが、その主張を認めてもらうのはなかなか難しいでしょう。
偽造した生徒手帳で年齢を偽っていたなどの証拠があれば、主張が通る可能性はあります。
夫への慰謝料請求は相手の年齢は関係ない
夫が妻以外の女性と肉体関係(不貞行為)があった場合は、妻は夫へ離婚や慰謝料を請求できます。
これは相手がいくつであろうと、誰であろうと関係ありません。
ただ、離婚せずに夫へ慰謝料を請求する妻はほとんどいません。
そもそも裁判で認められたとしても、金額としては数十万円程度と少額でしょう。
夫婦間でお金をやりとりしてもあまり意味は無いですし、わざわざ法的にお金を請求しなくても、夫婦のルールとしてペナルティを与えることもできるでしょう。
生活費をくれない場合は「婚姻費用」の請求を
ただし、別居していて生活費を受け取っていない場合などは慰謝料を請求してもいいでしょう。
あなたが離婚しなくてもいいと思っているなら、慰謝料より先に「婚姻費用」を請求しましょう。
夫婦には相手の生活を自分と同レベルに保つ義務があります。
夫の方が収入が多ければ、たとえ別居していても婚姻費用を妻に支払わなくてはならないのです。
家庭裁判所に婚姻費用の審判を申請すれば、支払い命令を書いた証書がもらえます。
それだけで預金や給料の差し押さえも可能になります。
離婚するまで、毎月その金額を受け取ることができるため、すぐに離婚に応じるよりも多くの金額が手に入ることになります。
責めるべきは浮気をした夫
未成年だとしても、浮気相手のことを許せないのは当然です。
ですが、相手の年齢によっては慰謝料を請求しない方がいいケースがあると分かったと思います。
立場を変えて考えると、少しは冷静になれるかと思います。
例えば、未成年である自分の娘が、大人の男性と不倫関係にあったと想像してみてください。
親としては、娘が悪い大人に騙されたと感じるのではないでしょうか。
世間的に見ても、未成年の女性が被害者、大人の男性が加害者という構図になるでしょう。
そもそも、一番悪いのは未成年相手に浮気をしたあなたの夫です。
離婚する場合はきっちりと夫に慰謝料を請求しましょう。
また、こちらから浮気相手に対して何もしなくても、相手の親にバレて夫が逮捕される可能性もあります。
ちなみに青少年保護育成条例の公訴時効は3年、児童買春の公訴時効は5年、強制性交等罪は10年、強制性交等致傷は15年です。
あなたの夫の浮気相手がたまたま未成年だった場合もあれば、SNSなどを使い女子高生と援助交際を繰り返していた場合もあるでしょう。
どちらなら許せるかという問題ではありませんが、このまま結婚生活を続けた方がいいのかは、よく考えてください。
多くの場合、離婚となっても問題ないように準備を始めた方がいいでしょう。
離婚しない場合でも証拠が欲しい
離婚する場合に、不貞行為の証拠が必要なのは分かると思います。
ですが、あなたに離婚するつもりがなくても証拠を手に入れておくのはとても大切なことです。
夫の浮気の証拠を持っていれば、夫からの離婚を拒否することができるからです。
(浮気をした有責配偶者からは離婚請求できないため)
また、ある程度子どもが大きくなってから別れようと考えている場合も証拠は重要です。
離婚するときに、昔の浮気の証拠を持っていれば、その分を含んだ離婚慰謝料を請求できるからです。
不貞行為には3年という時効がありますが、夫婦の間には時効がないんです。