別れさせ屋は違法?よくあるトラブルとリスク

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別れさせ屋とは

別れさせ屋は使っていいの?三角関係を解消したい、妻と離婚したい、夫を愛人と別れさせたいなどと悩む人は多いです。
そういった人からの依頼を受け、付き合ったり結婚したりしている男女を別れさせるのが「別れさせ屋」です。

別れさせ工作を行うためには、まずはターゲットの行動調査が必要になります。そのため、公安委員会に探偵として届け出を行った業者が業務の一部として行うことがほとんどです。
ただし、別れさせ屋が違法行為を行えば、依頼者であるあなたにも責任が及ぶ場合があります。

別れさせ工作の方法はハニートラップ

ハニートラップ基本的には恋愛トラップ。ターゲットに異性の工作員を接触させて、恋愛感情を抱かせるハニートラップが一般的です。

例:夫と愛人を別れさせる場合
夫に、好みのタイプの女性工作員が接触します。偶然を演出して知り合い、まずはLINEやメールを交換します。少しずつ親しくなり、デートを繰り返し、実際に交際します。そしてラブホテルへ入る時には、別の調査員が証拠写真やビデオを撮影します。

それから男性工作員の出番です。女性工作員の恋人役として夫と愛人がデートしているところへ乗り込みます。「俺の彼女に手を出したのはお前だな!」と写真を出して問い詰めます。
自分以外にも付き合っている人がいると知った愛人は、自分も遊ばれているだけだと気づいて別れるというわけです。

他にも、愛人に同性の工作員が近づき、「何でも話せる友人」になって心理誘導をするなど、多くの調査員・工作員が必要です。

愛人側に男性工作員が近づき、恋愛関係になって別れさせる方法もあります。男女のどちらに恋愛トラップをしかけるかは状況によりますが、男性を狙った方がうまくいく可能性が高くなります。

期間や費用はどのくらいかかるの?

お金工作会社や難易度にもよりますが、数ヶ月で数百万円という単位です。例えばだいたいのイメージですが、2ヶ月で150万円、3ヶ月で300万円といったところでしょうか。通常料金と成功報酬とを分けている場合もあります。
どんなに短くても2ヶ月はかかると思った方がいいでしょう。当然長引けば追加料金もかかってきます。

接触前の行動調査も必要ですし、接触する工作員の他にも、尾行する調査員が必要です。常に必ず複数人が関わるので、どうしても人件費がかかってしまいます。30万円程度で大丈夫と言われたら、何か裏があると考えてください。かなり難易度が低ければ可能かも知れませんが、ほとんどは追加料金を請求されるか、ろくな工作を行わない悪徳業者の可能性があります。

どのくらいの成功率なの?

成功率別れさせ屋のホームページを見ると、成功率70%や84%、中には90%と表記しているところもあります。ただ、具体的な統計を発表しているわけではないですし、何を持って失敗としているのかもわかりません。当然、自社に都合の良いように書いているはずです。

ただ、元工作員だった人の書き込みなどを見ると、別れさせることは意外と難しくない印象を受けます。もちろん業者の方針(肉体関係を利用するか)や、工作員の能力、依頼者の予算、ターゲットの状況などによっても成功率は大きく変わるでしょう。

中には、成功したときだけ料金が発生する「完全成功報酬」の業者もあります。そこに依頼すればリスクが無いと思うかも知れません。ですが、条件が合わないなどの理由で別のプランを進められたり、先払いで支払わせておいてなかなか失敗を認めず返金しないなど、悪徳業者にひっかかる可能性が高くなるでしょう。別れさせ工作には多くの人員と期間が必要です。かかった経費を回収できなければ、その業者はすぐに潰れてしまいますよね。

よくある失敗例

失敗予算オーバー
恋愛工作は、どうしてもある程度時間がかかります。予定外に進展が遅いと期間を延長しなくてはなりません。そうなったときに、依頼者の予算が尽きれば、途中で終了となってしまうこともあります。

バレてしまう
ターゲットにバレる場合、工作員からというより、依頼者経由での発覚に注意が必要です。報告のメールや契約書などをうっかり見られてしまえば、言い逃れできないでしょう。

工作員になびかない
警戒心が強かったり、家に引きこもってなかなか出かけないような場合は、うまくいかないことが多いです。田舎など、人気の無い場所でも、出会いを演出しにくいため難しくなります。

よりを戻してしまう
ターゲットと擬似恋愛関係になった工作員は、工作が終了したら離れます。徐々に嫌なところを見せて自然と別れたり、引っ越して遠距離になり疎遠になっていったりします。
そうなった後、もとの相手とよりを戻してしまうことがあります。一度は別れたとしても、依頼者としては成功とは言えないでしょう。

そもそも別れさせるつもりがない
ろくな工作もせずにお金だけ受け取る悪質な業者がいると心得ましょう。成功の見込みが無いケースでも、着手金欲しさに依頼を受けるところも。はっきり言えば詐欺ですが、立件は難しいでしょう。

っていうか合法なの?

公序良俗違反違法性があるのか気になるところですよね。「別れさせ契約」が公序良俗に反し無効かどうかが争われた訴訟がありました。

ある別れさせ屋が、ターゲットと連絡先を交換するなど、仕事を進めていました。ですが、別れさせようとしていた男女が、そもそも付き合っていなかったことに依頼者自身が気付いたそうです。依頼者は工作の中止を求め、支払いを拒否。すでに仕事をしていた別れさせ屋としては、費用を支払ってもらわなくては赤字です。支払いを求める別れさせ屋と、公序良俗違反だから契約自体が無効だとする依頼者とで裁判が行われました。

別れさせ屋が依頼人に支払いを求める訴訟です。1審の大阪簡裁では「対象者の恋愛感情をもてあそび、人格的利益の侵害だ」として契約自体の公序良俗違反を理由に請求を棄却しました。簡単に言うと、倫理に違反する契約だから無効だとしたのです。
ところが、控訴審である大阪地裁では、今回の例は公序良俗違反に当たらないとして、依頼人は別れさせ屋に97万円支払うようにとの判決が出ました。

ここでのポイントは、「今回の例は」のところです。
このケースでは、別れさせようとした男女は結婚していたわけではありません。そして、別れさせるために肉体関係を持つといった方法は計画されていませんでした。

結婚しているターゲットを離婚させようとしたり、肉体関係を結ぶなどの方法を使った場合には、「公序良俗違反」になる可能性もあるということです。

※2018年8月30日追記
2018年8月29日にも、大阪地裁で「別れさせ工作」が社会道徳に反するかどうかが争われた訴訟の控訴審判決が出ました。
こちらも上記の例のように、業者が依頼者に未払い分の支払いを求めて提訴したものです。
控訴審判決では「公序良俗に反するとまではいえない」として、報酬金を支払うよう求めた一審の判決を支持しました。
今回のケースでも、肉体関係を迫るような方法は用いられておらず、相手は未婚者でした。

殺人事件などのトラブルも

事件などのトラブル擬似恋愛は、人の感情を利用し、心をもてあそぶもの。感情的になれば深刻なトラブルがおきやすくなります。実際に殺人事件も起きています。

元別れさせ屋による殺人事件
ある夫は、妻と有利に別れるために別れさせ屋に依頼しました。そして妻に男性の工作員を近づけ、不倫させて離婚することに成功しました。
通常なら、男性工作員は徐々にターゲットからフェードアウトしていきます。ところがこの男性工作員は、ターゲットである女性と別れず、その後も交際を続けました。やがて女性は、男性が工作員だったことや、妻子がいることを知りました。そして口論となり、男性によって首を絞められ殺害されてしまったのです。男性は、殺害時には別れさせ屋を解雇されていました。

裁判では、元工作員の男性に懲役15年の判決がくだされました。また、裁判長は、別れさせ屋について「不法のそしりや社会的非難を免れないもので、金目当てにそのような工作に及ぶ者や、目的のため手段を選ばずそのような工作を依頼する者が存在すること自体が甚だ遺憾なことだ」と批判しています。

売春防止法違反・管理売春の疑いも
肉体関係を伴う別れさせ工作は、「売春」に当たる可能性がありますが、ソープランドですら「自由恋愛」として黙認されている現状では、「肉体工作」もグレーゾーンでしょう。
とはいっても、ソープランドも売春防止法違反で大量逮捕者が出たことがあります。別れさせ屋が検挙されたときに、依頼者にも責任が及ぶ危険があります。

悪徳業者も多い

悪徳業者そもそも多いのが、別れさせ屋と依頼者とのトラブルです。着手金を支払ったのにほとんど仕事がされなかったとして依頼者が損害賠償請求したケースもあります。
ろくに仕事をしない詐欺まがいの業者もいますし、まったく仕事をしない詐欺そのものの業者もいます。違法行為も行わずにちゃんと仕事をする別れさせ屋も中にはいるようですが、多くは悪徳業者と思った方が良いでしょう。

探偵業界も自粛規制
公序良俗に反するなどの理由から、一般社団法人日本調査業協会は「別れさせ屋に準じた事案については絶対にこれをしない」とする自主規制を設けています。
そもそも探偵業務とは、聞込み、尾行、張込みその他これらに類する方法のことであり、別れさせ工作や復讐代行、仕返し屋などは当てはまりません。

普通に浮気の証拠をつかんで慰謝料請求がベスト

信頼できる探偵へそもそも、夫と不倫相手を別れさせるのが目的なら、浮気の証拠をつかんで慰謝料を請求するのが正攻法です。
わざわざリスクの高い別れさせ屋に依頼する必要はありません。お金も時間ももったいないです。

もしも別れさせ屋に依頼して、夫と浮気相手とを別れさせることができたとします。その後、夫はおとなしくあなたの元へ戻ってくると思いますか?また別の相手と不倫するチャンスを待つだけではないでしょうか。

その都度、別れさせ屋に数百万円を支払って解決しつづけますか?本来であれば、お金を支払うのはあなたではありません。夫の不倫相手があなたに慰謝料を支払うべきなのです。

まずは浮気の証拠を手に入れるのが先決です。そのためには、別れさせ工作などを行っていない、まっとうな探偵事務所に相談してください。それが正当な解決への近道です。

夫婦カウンセラーの資格を所有しています。探偵についての疑問や、浮気調査、夫婦関係などについてわかりやすく情報をまとめるよう心がけています。