これって違法?合法?探偵の浮気調査が犯罪になるケース

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探偵の浮気調査が犯罪になるケース探偵のことを違法な仕事だと思っていませんか?

依頼したことがバレたら、相手に訴えられるんじゃないかと二の足を踏んでいる人もいるでしょう。

また、なんとなく興信所は合法で、探偵は違法と考えているかもしれませんが、これらは呼び方が違うだけで仕事内容は同じです。

探偵・興信所は合法な仕事です

合法探偵業そのものに、違法性はありません。探偵や興信所に依頼するのも、もちろん合法な行為です。

非合法な裏家業の1つと思っているなら、それは大きな間違い。暴力団、詐欺師、殺し屋、ヤミ金業者、密漁、危険ドラッグの売人などの裏家業とは違うので安心してください。
警察のOBも多く働いています。

2007年に「探偵業の業務の適正化に関する法律(探偵業法)」が施行されました。これによって、探偵業を営むには各都道府県の公安委員会へ、警察署を通じて届出が必要となっています。つまり探偵は、法律で認められた立派な仕事です。

逆に言うと、無届けで調査業を行っている業者は違法なので、間違えて依頼しないように注意してください。
正規の探偵業者であれば、届出番号の記載された探偵業届出証明書を、事務所の分かりやすいところに掲示しています。


調査には「正当な目的」が必要
探偵は、どんな調査でも行えるわけではありません。犯罪、人権、差別問題に繋がる調査をすることはできません。

○探偵業法第九条より
探偵業者は、当該探偵業務に係る調査の結果が犯罪行為、違法な差別的取扱いその他の違法な行為のために用いられることを知ったときは、当該探偵業務を行ってはならない。

違法な行為のための調査はできないということです。依頼する側も、調査結果を違法行為には利用しないという誓約書に署名しなくてはなりません。

例えば、次のような調査は行えません。

  • 娘の婚約者が、被差別部落出身かどうか調べたい
  • 一目惚れした相手の住所や連絡先を調べたい
  • DV(暴力)で出て行った妻がどこにいるか調べたい

このような正当性の無い調査は断られます。浮気調査の場合でも、こちらの身分を証明しなくてはなりません。結婚していない恋人関係の場合は、ちゃんと付き合っていることを証明する必要があります。
もちろん、匿名では調査を依頼できません。探偵は、依頼者を少しでも怪しいと感じたら、依頼を受けません。
(参考:匿名や偽名でも探偵・興信所に調査依頼ってできるの?


探偵には特別な権限はない
アメリカの場合はライセンス制で、試験に合格すれば、州によっては銃器を持てますし、逮捕権限もあります。そのため、私立警察なんて呼ばれることも。
日本の場合は、基本的には誰でも届出を出せますが、何の権限も与えられません。

○探偵業法第六条より
探偵業務を行うに当たっては、この法律により他の法令において禁止又は制限されている行為を行うことができることとなるものではないことに留意するとともに、人の生活の平穏を害する等個人の権利利益を侵害することがないようにしなければならない。

つまり、何の権限も無い一般人と基本的に同じなんです。

車内での張り込み中に、近所の人に「怪しい車がある」などと通報されて、警察が様子を見に来ることがあります。
探偵は職務質問されたら、嘘をつかずに「探偵で調査中だ」と明かします。警察は探偵の届出番号などを確認して、事件性が無ければすぐに引き上げます。張り込む場所が分かっている場合は、前もって警察に伝えておくこともあります。
探偵の尾行や張り込みなどが合法だと、警察官ももちろん理解しているからです。

ただし、このとき車の中に凶器があったり、飲酒運転をしていたりすれば、一般人と同じように普通に捕まります。

 

犯罪となる浮気の調査方法に注意!

調査すること自体は合法でも、その手段によっては違法となります。
実際に探偵が処分をうけたり、逮捕されたりしています。
どんな法律違反となる可能性があるのかみてみましょう。


プライバシーの侵害
守られる個人情報実は、「プライバシー権」という規定は法律上にありません。裁判の判例によって、「私生活をみだりに公開されない法的保障ないし権利」と定義されました。

一般的に知られたくないであろう私生活の事実を、本人の許可無く公開すると、プライバシーの侵害となります。

探偵は、ラブホテルへ出入りする写真などを撮影しますが、一般に公開することはもちろんありませんし、そもそも正当な理由があっての業務としての行為であれば、プライバシー権や肖像権の侵害とは判断されません。

○探偵がプライバシーを侵害したと認められた裁判がある
実は2006年に、探偵の撮影行為がプライバシーの侵害だとして、50万円の賠償命令を命じる判決がくだされたケースがあります。
探偵は、調査対象者(浮気相手である女性)が住むマンションのエレベーター脇の配電盤上部に遠隔操作できるビデオカメラを設置しました。
それが、判決で「プライバシーが侵害されたことは明らかである」とされたのです。
(参考:判決文-裁判所ウェブサイト

部屋の出入り口は、居室内ではありませんが、マンションの廊下はプライベートエリアとも言えます。そこへカメラを設置するのはやり過ぎと判断されたのでしょう。
最近の探偵は、マンション建物の中へは入りません。特に、オートロックのマンションへ侵入すれば住居侵入罪に問われるからです。


住居侵入罪
住居侵入罪一般的に不法侵入と呼ばれるものです。たとえ探偵でも、他人の家や敷地内に無断で立ち入ることはできません。

マンション・アパートの廊下や階段などの共用部分については、住居侵入罪となるのかどうか、判例でもハッキリと定まっていません。
状況によって住居侵入罪となったりならなかったりしています。

○入居者の意志に反した立ち入りかどうか
集合住宅へのビラ配布が、住居侵入罪かどうかを争った「立川反戦ビラ配布事件」では、最高裁で2008年に有罪が確定しています。
入居者の意志に反した立ち入りであることが、有罪のポイントのひとつとなっています。「関係者立ち入り禁止!」などの張り紙や立て札がある場合は、有罪となる可能性が高くなると言えます。

特にマンションの入り口がオートロックの場合は、無断で立ち入れば明らかな住居侵入となります。

法律を厳守する探偵は、オートロックのマンション建物の中までは尾行しません。
対象者の部屋番号を突き止めるためには、帰宅後にどの部屋の灯りが点くのかを確認するなどのテクニックを使います。

オートロックで無ければ、共用部分へ立ち入ってもすぐに問題となることは少ないでしょう。
住民や管理人に不審人物と思われれば、警察へ通報されることもありますし、退去を要求されても立ち去らなければ、不退去罪となる可能性があります。

GPSを調査に使う探偵もいます。これは、家族の乗っている自動車などに設置するのは問題ありませんが、他人の自動車へ設置するのは問題です。設置や取り外しのときに、住居侵入罪となる可能性が高いからです。
実際2008年に、GPSを外そうとして敷地内に侵入した探偵が、住居侵入罪で現行犯逮捕されています。
当然、盗聴器や隠しカメラを他人の家に仕掛けようと侵入するのもアウトです。


のぞき、つきまとい行為などの軽犯罪法違反
猫が見てる軽犯罪法では、33の行為が罪として定められています。その中で探偵に関係があるのは、「のぞき」と「つきまとい」でしょう。

他人の家の中をのぞき見るのは違法行為ですが、普通の探偵は室内を撮影することはありません。
証拠として狙うのは、ラブホテルなどへ出入りする写真です。

また、相手に気づかれずに尾行する行為は、つきまといとはなりません。
そもそも、探偵業法によって、正当な理由で探偵が尾行するのは認められています。
ただし、尾行がバレたときの対応によっては、つきまといと判断される可能性もあります。
(参考:探偵の尾行は「のぞき・つきまとい行為」にならないの?


ストーカー行為等の規制等に関する法律違反
つきまとい探偵の尾行は「つきまとい行為」にならないのだから、ストーカー行為等の規制等に関する法律(通称ストーカー規制法)にも触れないと考えられます。

しかもこの法律には、「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で」と記載されています。つまり、恋愛に伴う好意や恨みが伴わなければ、ストーカー行為とはならないのです。
調査員は仕事として尾行をしているのだから、当然ストーカーとはまったく別のものです。

○探偵がストーカーとして書類送検されたケース
対象者の女性への待ち伏せを指示した探偵業者2人と、実際に待ち伏せをしたアルバイト1名が書類送検されました。
これが普通の調査と違ったのは、ストーカーからの依頼だったことです。探偵は、依頼者がストーカーだと分かっていました。ストーカー規制法以前に、違法行為のための探偵業務を行ってはならないという探偵業法第九条に違反するものです。
これは特殊なケースで、原則としては探偵業務がストーカー行為と判断されることはありません。

探偵が調査中に対象者に恋愛感情を抱いて、個人的に尾行などを行えば、それはストーカー行為とみなされるでしょう。
普通は考えにくいですが、「別れさせ屋」などを行う工作員の場合はありえる話です。
(参考:別れさせ屋は違法?


個人情報の漏えいに関する様々な法律違反
身分証手持ちの少ない情報から個人情報を調べる方法として「データ調査」があります。
電話番号から、契約者の住所を調べることも可能ですが、これは企業内部の協力者が、一件いくらで個人情報を調べて売っているんです。

企業の顧客情報を流出させた従業員は不正競争防止法違反(営業秘密侵害)で何人も逮捕されています。
他にも、偽造有印私文書行使、戸籍法違反、住民基本台帳法違反、国家公務員法違反(守秘義務違反)、地方公務員法違反(守秘義務違反)などで、協力者や調査会社の経営者などが摘発されています。
(参考:個人情報を調べるデータ調査とは?


盗聴に関する法律
固定電話実は、盗聴器を使って盗聴すること自体をとがめる法律はありません。

ですが、GPSやカメラと同様、仕掛けるために他人の家に侵入すれば、「住居侵入罪」となります。

自分の家や車に盗聴器やボイスレコーダーを設置するのは問題ありません。ただし、録音内容を公開すれば「プライバシーの侵害」となります。

○固定電話の場合はNG
電話回線に盗聴器をしかけると、「有線電機通信法」に抵触します。
携帯電話やコードレスフォンの場合は、無線なのでこの法律は関係ありません。ただし、他人に内容を漏らせば「電波法違反」となります。

実際の浮気調査では、音声だけでは確実な証拠とはならないので、盗聴器をメインに使用することはありません。
玄関の見えない場所で張り込まざるをえないときなどに、ドアの開閉音を聞くために部屋の外に盗聴器を設置する探偵はいます。これは部屋の外であり、室内の音声も聞こえなければ、違法性は低いと考えられます。
ただし、マンションの共用部分へ入るのであれば、状況によっては住居侵入罪となります。

違法な調査をすすめる探偵に依頼しないで!

ダメ!探偵が調査をすること自体は、国からも認められていますが、違法な調査方法もあります。
どんな手段が違法行為なのかは、ある程度把握しておきましょう。なぜなら、違法行為を提案してくる探偵を避けるためです。
確かに、非合法な手段を使った方が簡単に調査を進められることもあるでしょう。しかしそれは、自社の調査力が低いと言っているようなものです。
そして、法律を軽視する会社ほど、料金などでトラブルになる可能性が高いでしょう。

違法性の高い調査を行うと分かっていて依頼すれば、依頼したあなたも罪に問われる可能性があります。
まともな探偵なら、法律を守った上で証拠を手に入れることができるのですから、無用なリスクを犯すのはおすすめできません。

夫婦カウンセラーの資格を所有しています。探偵についての疑問や、浮気調査、夫婦関係などについてわかりやすく情報をまとめるよう心がけています。